カレーライスこそ外来文化受容の典型
日本の国民食とも言えるカレーライス。
その材料から言って当然、日本古来の料理ではない。
では、どうしてカレーライスはここまで日本人の心を離さないのか。
この本では幕末・明治のカレーライスと日本人との出会い、日本における受容の始まりから明治後半のカレーの定着、国民食へと浸透していく過程を各種資料に基づきながら丹念に著述している。ジャガイモやタマネギといった西洋野菜の普及のみならず、日本在来の様々な食材の使用(今では考えられないようなものも入っているが)をもって初めてカレーライスは「洋食」たりえたのであろう。
外来の食事を自分たちに合うように変えていったカレーライスの歴史こそは日本の外来文化受容の典型といえるだろう。
ただ、これだけ面白い素材を使っている割には文章はいまいち味わいが足りなかったような気がする。カレーライスや洋食の歴史についての本は何冊か出ているが、今ひとつ新味がなかった。
「カレーライス」の全てが分かる本
夏はカレー。
「水を何度もおかわりをしながら、ふき出る汗をぬぐってライスカレーを食うのは若者の特権だろう。夏とライスカレーは、まさしく若者のためにある」(続『深代惇郎の天声人語』P16から)
深代は「カレーライス」派ではなく「ライスカレー」派だったか。ところで、いったいどちらが正しい(古い)表記なのか? この本は、そういった「よくある疑問」から、カレーに関するほとんど全ての事象を網羅しているといってよい。しかも、それらの一つ一つの面白いこと。
日本のカレーライスを食べたインド人が、「これは美味い。この料理は何というのか?」と聞いたという逸話があるほど、わが国の食文化に浸透しているカレー。
その秘密は2つある、と著者は言う。
それは「タマネギ・ニンジン・ジャガイモ」という『カレー3種の神器』の普及と、『眼で食べる日本人』の感覚がマッチしていたということなのだ。
さて、そうしてこの本を読んで「カレーの全てが分かる」とどうなるのか? そう、無性にカレーが食べたくなるのだ(笑)
カレーライス三種の神器
アジア各国やアメリカ・ヨーロッパと いろいろなところでカレーライスを食べてはきたが 肉+ジャガイモ+ニンジン+玉ねぎという具と とろみのあるルーの組み合わせは 日本独特のものだと感じてはいた。本書は本場のカレー料理ではなく、如何にその純和製の 「カレーライス」スタイルが出来上がってきたか、 を中心に歴史を追った解説書である。 カレーライスが日本の食卓に 大きなウエイトを占めていく過程は 急激な西洋化・近代化・省力化の流れとも一致する。 この流れは現在まで続いており いわゆるレトルトカレーを生み出すに至っている。 日本のカレーを食べたインド人が 「この美味しい料理の名はなんというのか?」 と聞いたというエピソードからも 日本の近代化スタイルが独特のものであったという 一つの証拠であろう
ジャパニーズカレー開発の挑戦者たち
文明開化とともに西洋料理として日本に入ってきたカレー。 近代化という歩みとともに日本のカレーは、カレーパン・カレーうどん・ドライカレー・レトルトカレーなどのニューオリジナルスタイルをつくっていく。これら食べ物の発明の裏側には、人々の試行錯誤があった。 ジャパニーズカレーの歴史を記した本は何冊かあるけれど、この本でとりわけ魅力的なのは、日本独自のカレー加工品(カレーうどんやカレーパンなど)を発明した人物たちのドラマが生き生きと描かれているところだ。 冷静に考えてみると、カレーうどんやカレーパンなど「定番」の仲間入りを果たすような、カレー加工品が最近なかなか出てこない(スーパーやコンビニで、カレー加工品は意外なほど見あたらないものだ)。それだ!け、いま定番となっているカレー製品は、開発の工夫と努力があってこそのものなんだろう。 黎明期から現代に至るまで、ジャパニーズカレーの歴史がこの本には詰まっている。
講談社
カレーライスと日本人 (講談社現代新書) 日本人はカレーライスがなぜ好きなのか (平凡社新書) ヨコハマ洋食文化事始め カレーライスの謎―なぜ日本中の食卓が虜になったのか (角川SSC新書) 世界地図から食の歴史を読む方法―料理や食材の伝播に秘められた意外な事実とは? (KAWADE夢新書)
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